「ここで働いてる方はみんないい人ですから」

「あ、みんな。そうか、みんな」


 よかった…


「え?」

「いいいえっ、何でもないです。良かったです、みんなで」

「え?」

「あ、ホント、なんでもないんです」

「そうですか? どうか懲りずに、また来てくださいね」


 また…か。

 来れるのかな、私。


「は、はい。頑張ってきてみます」

「では、ごゆっくり。流川さんとちゃんと仲直りできるといいですね」

「…ありがとうございます」


 ボーイさんの背中を見送って。

 ステージに顔を向ける私。


 激しく腰を振り、頭を振り、カラダ全体で踊るオネエマンたちは。


「ふ…ぶぶぶぶぶっっ!」


 やっぱり、面白い。


「ちょっとアンタっ、笑ってばかりいないでちゃんと改善点みつけるのよっ」


 ステージ上から叫ぶ、らぶりー留美。


「なんだったら一緒に踊りなさい、教えてあげるわよ」

「アタシたちの爪の垢でも飲んでいきなさい」

「下品な笑い方ね。スカートからパンツ見えてるわよ」


 口々に叫ぶオネエマン一同。


 なんだよ。

 …みんないい人じゃん、ホント。


「あ、足がっ! ただのオカマみたいになってます! もっとこう、上品に開いて。
あと顔っ! 顔が怖い…じゃなくて、ときどき白目になるので気をつけてくださいっ!」


 私も。

 何故か本気になってダンス批評を繰り返し。

 
 興奮のあまり、運ばれてきたお酒もすっかり飲み干してしまって。

 異常な店内のボルテージ。

 他のお客さんたちもノッてきて。

 
「楽しいかも」


 どうしよう。

 ハマったら。


 ダンスフロアと化した店内で。

 お酒のはいった私もつられて踊ってしまったり。


「なによ、アンタ上手いじゃない。うちで働けば?」


 踊りながら言うらぶりー留美。


 そこは、性別ってものがありますから。

 無理です。お姉さん。


 興奮と爽快感に包まれながら、一時間以上も踊り狂ってしまった。


 あははは……