「ちょっと、この娘にもう一杯なんか運んでやって」


 らぶりー留美がボーイさんに声をかけて。


「あああのっ! 流川の連絡先は?」


 焦って聞けば。


「まずはアタシたちのダンスを見てからよ」

「ええっ?」

「まあ、アンタがナオちゃんに対して申し訳ないって思ってるのちゃんと分かったから。番号は教えてあげるわ。でもタダじゃ帰さないわよ。せっかく来たんだからもう一杯くらい飲んでいきなさい」

「あの、でも」

「お金はいいわよ。アンタ貧乏そうだし」


 だから、そこじゃないってば…私が戸惑ってるのは。


「じゃ、アンタ達、踊るわよ。スタンバイしなさい」

「「はぁ~~~い♪」」

「……」


 らぶりー留美のひと言で、一斉に立ち上がったその他大勢のオネエマンたち。

 ひと際大きな音で流れてきたダンスミュージックが店内に響いて…


「ダンスターィッム!!」


 う、うわぁぁ…

 始まっちゃったよ。

 帰れるの? 私?


「お待たせしました」


 グラスを運んできてくれたボーイさん。


「あ。すみません」

「壮行会って言ってましたよね?」

「え?」


 ボーイさんは。

 グラスを受け取った私に微笑んで。


「留美さん、見た目は…あんな感じですけど、いい人なんですよ」

「は、はあ」

「見ていきなさい、飲んでいきなさい、なんて言ってますけど、あなたのこと励まそうとしてるんですよ、きっと」

「え?」

「まあ、ヤキモチ妬いてるところは確実にあるでしょうけど。あ、すみません。私もお話聞いてしまって」

「はぁ」


 もういいですよ。

 あんなに大勢のオネエマンに聞かれてしまったから、

 あと何人に聞かれても。


「勢いをつけてあげようとしてるんですよ。これはこれで、留美さんの優しさなんです」


 ボーイさんはまた微笑んで、ステージで踊り狂うオネエマンたちを見つめる。

 …オネエマン、だよな?

 え? らぶりー留美?

 そ…その視線… なんだかすご~く優しいです。

 う。

 深追いはやめよう…