電話を切ったあと。
私はしばらく放心状態。
「そんなぁ…」
声に出してつぶやけば。
「俺の言うことはウソでも何でもなかったろ?」
得意気に腰に手を当てて、そいつは私の顔をのぞき込んだ。
黒髪から、ほんのり流れ出るいつものシャンプーの香りが、
要くんと同じ香りを放っていて。
私はまた、どきんっとする。
「ち、近寄らないでっ!」
慌てて身をひいてみれば。
「なんだよ。これから一ヶ月一緒に暮らすことになるんだから、慣れてもらわないと面倒だぜ?」
上目づかいで、ますます顔が近づいて。
くいっと上がった口元は、何かを企んでいそうな雰囲気。
「やっ…」
ヤバイ…
ホントに襲われるかもっ。
っていうか、この人。
近くで見ると結構……
いや、かなり。
カッコいいかも…ですけど…