「あ、あの…」 


 口を開いた私は。

 一応ね、一応。

 もう何となく分かるけど。


「らぶりー留美、っていう人を頼って来たんですけど…」

「アタシだけど?」


 …やっぱりね。

 らぶりー…か。

 そうか…


「何の用?」


 オネエマンは。

 タバコを挟んだ指で頬をかきながら、私をジッと見る。

 濃すぎるまつげが、怖いっ。


「カエルのなかから… えぇっと、たまたまらぶりー留美さんの名刺が出てきまして…」

「は?」

「その、る…流川に、連絡を取りたいんですけど…
電話番号も何も分からなくなっちゃって。らぶりー留美さんなら、知ってるかなって思って…」


 そう言うと。

 まつげに隠れた小さな目を大きくしたオネエマンは。


「なにアンタ。記憶喪失?」


 なんか勘違いしてるし。


「連絡取りたいって何よ? 番号わからなくなったって。アンタたちまだ一緒の部屋にいるんでしょ? 意味わかんないわ」

「ち、違うんですっ。流川とはもう一緒じゃなくて。話せば長くなるんですけど…。
あのっ! 番号だけでも知ってれば… 教えてもらいましーっ!」

「日本語おかしいわよアンタ。大丈夫? ホントにボケたんじゃない?」

「とにかくっ、連絡とりたいんです! 教えてくださいっ!」


 私は。

 店中に響き渡るぐらいの大声を出してしまって。


「うっさいわね。とにかく落ち着いて分かるように説明しなさいよ」


 オネエマンは、そう言うと、ボーイさんに飲み物を頼んだ。


「番号は知ってるけど。理由も分からずにタダでは教えらんないわよ。アタシのナオちゃんなんだから」

「………」


 ボーイさんが色付きのお酒を運んできて。


「ほら、これでも飲んで。ゆっくり話してごらんなさい。聞いてあげるわ」


 グラスを私に差し出して。


 話すのは勇気がいるけれど。

 きっとこのオネエマ… らぶりー留美は。

 納得いかないと、絶対に教えてくれないだろう…な。


 私は、覚悟して。

 流川とのことを話すことにした。