アパートに戻った私。
久々の自分の部屋は…
「く…くさい…」
夏の暑さを凝縮したような熱気と、こもったニオイ。
「腐ってるよ…私の部屋」
急いでベランダの窓を開けて、
涼しい夜の空気を取り込んだ。
ふと、視線を移したベッド。
「ひぃっ…!」
驚きのあまり、咽に声がつまって。
「な…なんで…」
私のベッドにちゃっかり横たわっている…
「か…カエル…」
緑色の、伸びた物体。
「どうして…カエル?」
おそるおそる近寄って。
その伸びたカラダをチェックする。
「麻紀カエルだよな…」
要くんの部屋に置きっぱなしのはずのカエルであることに間違いなくて。
赤い口を開けたカエルは、私の腕のなかで気持ち良さそうに笑っている。
「もしかして要くん?」
ふと思い当たって、要くんに電話をした。
「もしもし? 要くん?」
「唯衣? 部屋に戻れた? ちゃんと」
「うん。ガス代も払ってきたから、明日からまともな生活ができると思う」
「はは。良かった」
優しい声。
やっぱり、離れてしまうとどこか切なくて、愛しくて。
まだ…
きゅん…としてしまう。
「へへ…」
笑ってみても、ちくんと胸が痛い。