「あのね…」

「いいよ、言わなくて」

「…でも」

「あったようで、何にもないだろ?」

「え?」

「唯衣は顔に出るからすぐわかるよ」

「…そんなぁ」

「流川のこと見てもわかるよ。なにかあったら後ろめたいもんな。あんなにいきり立って俺に取っ付いてくるわけないだろ?」

「…要くん」

「意外と似たもの同士かもな、唯衣と流川」

「…それは絶対ない」

「はは」


 要くんは。

 やっぱり優しい人だ。


 胸の奥。

 要くんとちゃんと話せたことと、

 流川の話を聞いたこと。

 いろんな思いがごちゃごちゃになっていて。

 まだ…

 結論が出せない。


 それはきっと…要くんも同じ。

 似たもの同士なのは本当は…私と要くんなのかもしれない。


「唯衣…本当にごめんな」

「ううん。ありがと、話してくれて」


 要くんが、腕を動かして。

 でも躊躇してるのがわかった。


 私は。

 要くんの手を取って。


 もしかしたら最後になるかもしれないその胸に、顔をうずめた。

 
 ちょっと切なくて。

 でも、どこかほっとして。


 要くんも私を抱きしめて。

 静かな時間が流れた。



 その夜、私たちは長い時間いろいろ話をした。

 お互いに、やっぱりすぐに答えは出せなくて。



 とりあえず私は。

 次の日に自分のアパートに戻ることにして。

 お互いに少し、

 距離をおくことにした。