「お前さ」
薄く目を開いた流川。
頬に触れていた左手首を、ふいにぎゅっとつかまれて。
切れた口元が静かに動いた。
突然のことに、少し動揺する。
「ちょっと流川、傷、しゃべるとまた血が…」
「こんなの大したことねーよ」
「でもほら、滲んできたよ、血…」
「大したことねーって言ってるだろ」
なんだろう…搾り出すような声が、少し、怖い。
「ひ、冷やしてやってるんだからさ、手、放してよ」
「…頼んでねーよ」
「頼んで…って。人がせっかく…」
「こんなことすんなよ。自分の男でもねーヤツに」
手首をつかむ、流川の手にチカラが込められる。
「痛いよ、流川」
「…俺のほうが痛てーよ」
「だ…だから、冷やしてやってんじゃん。放してよ」
「…お前さ、近すぎんだよ」
「え?」
「あんまり近づくな、俺に」
一瞬、流川の目に鋭さが走って。
手首をつかまれたままの私は、反射的にカラダを引いた。
なに…?
口調は同じだけど…
いつもの流川と、なにか違う。
「怖いよ…流川。どうしたの?」
「……」
まだ鋭さが滲んだ目が、じっと私を見据えている。
「ねえ、放して。は、早く冷やそうよ、顔…」
「……」
「流川…?」
そのとき、ソファの上の流川は、持っていたカエルを床に投げ捨てた。
落ちたカエルは、仰向けに床に伸びていて。
「なっ、ちょっと可哀そうじゃんカエル。なにすんの?」
今夜の流川は…何か、変。
離れたくて、カエルのほうへ右手を伸ばしてカラダを傾けたとき。
手首をつかむ流川の手に、一層チカラが入った。
「痛っ…!」
はずみで、手の中から滑り落ちた氷入りのビニール袋が。
バラバラと音を立てて床に零れ落ちる。
溶けた水がフローリングに広がって、
氷の粒が、あちこちに散らばった。
薄く目を開いた流川。
頬に触れていた左手首を、ふいにぎゅっとつかまれて。
切れた口元が静かに動いた。
突然のことに、少し動揺する。
「ちょっと流川、傷、しゃべるとまた血が…」
「こんなの大したことねーよ」
「でもほら、滲んできたよ、血…」
「大したことねーって言ってるだろ」
なんだろう…搾り出すような声が、少し、怖い。
「ひ、冷やしてやってるんだからさ、手、放してよ」
「…頼んでねーよ」
「頼んで…って。人がせっかく…」
「こんなことすんなよ。自分の男でもねーヤツに」
手首をつかむ、流川の手にチカラが込められる。
「痛いよ、流川」
「…俺のほうが痛てーよ」
「だ…だから、冷やしてやってんじゃん。放してよ」
「…お前さ、近すぎんだよ」
「え?」
「あんまり近づくな、俺に」
一瞬、流川の目に鋭さが走って。
手首をつかまれたままの私は、反射的にカラダを引いた。
なに…?
口調は同じだけど…
いつもの流川と、なにか違う。
「怖いよ…流川。どうしたの?」
「……」
まだ鋭さが滲んだ目が、じっと私を見据えている。
「ねえ、放して。は、早く冷やそうよ、顔…」
「……」
「流川…?」
そのとき、ソファの上の流川は、持っていたカエルを床に投げ捨てた。
落ちたカエルは、仰向けに床に伸びていて。
「なっ、ちょっと可哀そうじゃんカエル。なにすんの?」
今夜の流川は…何か、変。
離れたくて、カエルのほうへ右手を伸ばしてカラダを傾けたとき。
手首をつかむ流川の手に、一層チカラが入った。
「痛っ…!」
はずみで、手の中から滑り落ちた氷入りのビニール袋が。
バラバラと音を立てて床に零れ落ちる。
溶けた水がフローリングに広がって、
氷の粒が、あちこちに散らばった。