「こちらで最後になりますね。地元産のスイカと甘夏を使ったシャーベットです」
仲居さんが最後のデザートを運んできてくれたところで、麻紀はぱったりと倒れた。
「彼女さん大丈夫ですか?! 白目むいてます…」
仲居さんがびっくりしてしまい。
「ごめんごめん、大丈夫。調子にのって飲みすぎただけだから。それよりさ、麻紀がこんなだから、仲居さん、遊びにきてくれていいよ?」
祐二くんが言うと。
「こんの、バカタレがーーぁっ!」
倒れたまま足で首を絞める麻紀。
おしりおしりっ! 出てるっ!
「すごい…」
感心する仲居さん。
それ… 半分寝てて、しかも倒れてもしっかり首を絞めてることに対して?
それとも、おしりがほぼ全開のパンツに対して?
隣りの流川も、これにはさすがにびっくり。
お猪口を持つ手が止まってるし。
「あの、これが終わったらお布団敷きますね。あ、お二方のお部屋は先ほど敷いてきました」
私と流川を見て、ほんの少し顔を赤らめた仲居さんは言った。
あの…
その赤面はどういった意味でしょう…
「ありがとう」
仲居さんに言った流川は、
「これ食ったら戻るぞ」
私に言って、お猪口を下ろした。
シャーベットにスプーンを運ぶ。
お酒で熱くなったカラダに、シャーベットの冷たさが、じゅんと染みる。
果物の味がちゃんとして、甘酸っぱくてすごく美味しい。
「ひゃ~、美味しい」
「うまいな、これ」
シャーベットをたいらげた私たち。
「おい麻紀、これから布団敷くんだ、起きろ」
麻紀の乱れた浴衣を直すのを断念して、そのカラダを抱き上げた祐二くん。
「ひどいな、これ」
「麻紀、明日ちゃんと起きれるのかな…」
「じゃあ、俺たちはこれで」
「んー、おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみぃ~ 唯衣、流川直人~」
「すげ…寝ながらしゃべってる…」
私と流川は、祐二くんに抱かれてひらひら手を振る麻紀を眺めながら、部屋をあとにした。