祐二くんと流川を交互ににらみつけていると。


ふっと笑った流川と目が合った。


と思ったらその腕がすっと伸びてきて。


ふわりと肩を抱かれて引き寄せられ。



「俺はコイツで満足してますから」



なんて言っちゃって。



…どきんっ!



ちょ、ちょっと…なんだ? 


なんだなんだなんだ?


なにトキメイテんだ、私?



っていうか、その行動、彼氏みたいじゃんかっ!


やめろやめろやめろっ!



「なんだ、そっか」



つまらなそうにビールをグラスに注ぐ祐二くん。


あ、そうか。


こうすればすぐに諦めるタイプだもんね、祐二くん。


まったく、軽いんだか、素直なんだか。

 

それにしても、流川め。


私ばっかりにドキドキさせやがって。



「は、放せっ、流川直人!」



私がふがふがもがいていると、流川の顔が引きつった。


どうやら、ふすまの陰の、麻紀に気づいた模様。



「でも祐二さんはうらやましいですね。麻紀さんみたいな美人な彼女がいて」



いきなり切り出した。


ん? と見上げていると。



「面白いし、素直そうだし、明るいし」



ん? と私と同じような顔を流川にむけた祐二くん。



「なにより祐二さんのこと、ホントに大好きそうですし」


「ん? んあ、まあね」


「祐二さんはどうなんですか?」


「え?」


「麻紀さんのこと。大事なんでしょう?」


「あ、ああ、うん」



ぽりぽり頭をかき始めた祐二くんは。


もう一度ビールをグラスに注ぎなおして。


左手に持ったグラスのなかのビールをくるくる回して、眺めてる。