夕食時。


麻紀たちの部屋に集まった私たち4人。


「先ほどは本当にすみませんでした!!」


数回にわけて料理を運んできながら、その度に頭をさげる仲居さん。


「全然気にしてないって。逆にビビらせてごめんね」


「うんうん、何なら、俺が仲居さんにいろいろ教えてやっても…」


ガゴッ!!


「いでっ!!」


麻紀と祐二くんの漫才の隣りで、


「まあ、事故みたいなもんだから」


さらりと言う流川。

 
事故か…


まあ、そんなもんだろう。


仲居さんが見ちゃったことも、私と流川の未遂も。

 
でもこんなに簡単に「事故」なんて言われると、ちょっとムカつくなぁ。


1、2ヶ所、キスを落とされたのは確かだし。

 
あああ、でもっ! それを許してしまった私って一体…。


どうかしてる。


温泉旅行って、絶対魔物がいる。


「それにしても、唯衣ちゃんの浴衣姿もいいなぁ。ね? 流川くん」


麻紀がトイレに立った隙を狙って、ほろ酔い加減の祐二くん。


「麻紀とはまた違った可愛さっていうの? なんか、こじんまりしてて可愛いわぁ。ね? 流川くん」


こじんまりって。


っていうか、いちいち流川に振らないでくれます?


なんか…意識しちゃうじゃん…


「まあ、それなりに」


振られた流川のほうと言えば、こんな感じの返事ばっかりで。


なんだよ。これにもちょっとムカつくわ。


「んでも流川くんの浴衣姿もいいなぁ。俺、男の浴衣に興奮したのなんて初めて」



祐二くんの言葉に。


ビールの入ったグラスを持ちながら、ぴくりと頬が引きつる流川。

 
「ぷっ」


思わず笑うと。


「笑うな」


頬を引きつらせたまま私を見おろす流川の顔。


「もしかして…お風呂でなんかされた?」


聞くと。


「うるせ」


思い出したようにますます引きつる顔で、ぐびびっとビールを飲み干した。

 
げ。マジで?


こりゃ、いろんなとこ、触られたな…

祐二くん、恐るべし。