どうせ私なんか、浴衣の胸元をのぞかれても、何にも感じてもらえない女ですよ。
カエルの目玉をつついたり、赤い口におでこを押しつけたり。
流川に背をむけたまま、カエルに八つ当たりをしていると。
「無言だけど確実に痛がってるぞ、カエル」
後ろから、流川の声。
「あ、ごめん、カエル」
はっ。しまった。
釣られた。
「ふんっ。痛がってないよ」
「良くわかんねーけど機嫌なおせよ。もうすぐメシだぞ」
「ふんっ」
「子どもは腹減ると機嫌悪くなるって言うしな」
「子ども…」
はいはいはい、子どもですよっ。
カラダもちんちくりんな、お子ちゃまですよっ。
っていうか、無言のカエルの気持ちはわかって、私の気持ちはわからんのか貴様っ!
「どーせ私なん…」
「イイと思うけど?」
「…は?」
「可愛いよ、浴衣姿」
……はい?
今なんて?
カラダを向き直して流川を見上げれば。
「似合うぞ、なかなか」
右足だけ立て膝で、私を見おろしている。
目が、優しい。
けど!
あああー、それ以上股を開くなっ。
「い、いいよ、お世辞なんて」
「お世辞じゃねーよ」
「お…思ってもないくせに」
「俺が褒めてやってんだぞ」
「俺が、って」
「俺はウソはつかない」
がーーっ!
信じるかっ、信じるもんかっ!
「からかうのもいい加減にっ…」
「じゃあなにか? お前は男がその気にならないと、女として認められてないとでも言いたいのか?」
「…へ?」
「襲われないと、自信が持てねーのか」
「いや…そういうことじゃなくて」
「そういうことだろ」
きつくなった視線が。
私の目を、がっちり捕らえる。
う。
ヘビに睨まれたカエル状態。
カエルを抱いてる私がカエルって…
「襲ってやろうか?」
「え?」
「少なくとも、浴衣姿を見てガッカリする男はいねーよ」
「あ…」
「むしろ、その逆だ」