「ほら、俺のおごりだ」
いきなり差し出された林檎ジュース。
…を、おでこに押しつけられて。
「冷たっ!」
「お前、林檎モノ好きだろ」
なんだ。飲み物買いに行ってたのか。
私のぶんも買ってくるなんて、気が利いてるじゃん。
「あ、ありがと」
そのまま、カエルの隣りにごろりと横になった流川。
ぐっ、と畳の上で伸びをしてから、肩肘をついて横向きになり。
私にくれたのと同じ林檎ジュースを空いてる片手で飲んでいる。
浴衣姿か。
いいなぁ…
って!
そういえば浴衣じゃんっ!
気付くと、マジマジと眺めてしまう、流川の浴衣姿。
カーブした腰のラインとか…
ちらりと見える、膝から下のすんなり加減とか…
あいてる胸元からのぞいている胸板とか…
なんていうか…
「い…色っぽい…んですけど」
なんだ、これ?
女の私より艶っぽいんですけど?
「は?」
ジュースを畳の上においた流川の上目づかいがまた…
「や、やめて…」
「は? なんにもしてねーだろ」
「ズルイ…流川直人」
「なんなんだよ」
乾ききってない黒髪をかきあげて、怪訝そうな流川。
う…和服ってだけで…
悔しいが、萌える…
「なんだよお前、また顔赤いぞ。のぼせてんのか?」
立ち上がった流川が、私に近づいてきて。
「長風呂したんだろ」
おでこに手を当てる。
前かがみのはだけ気味の胸元に、近過ぎる顔。
ぼぼぼぼぼっっ!
赤面最高潮。
「ううう…」
「おい、大丈夫か? 熱いぞ」
言って。
私の手から林檎ジュースを奪い取り。
「横になって冷やせ」
おそらく真っ赤な私の頬に冷たい缶を押しつける。
「耳まで赤いな」
あ、あんたのせいだってっ!