部屋に戻ると、何故か流川はいなくって。


カエルだけが座布団の上に座って私を待っていた。

 

まだお風呂?

 
男のくせに随分長風呂なヤツだ。

 
 
まあ、ちょっと一安心して。

 
山の新鮮な空気を取り入れようと窓を開ける。

 
 
ザワザワっと揺れる木々の音。

 
ほんのり染まった薄紫色の雲。

 
 
あああ…気持ちいい。
 
 
旅行、最高。

 
 
しばらく顔だけに風を当てていたけれど。

 
あまりの気持ちよさに、がっちりしめていた浴衣の胸元を緩めて、パサパサと風を入れ込んだとき。



「随分遅かったな」


 
背後から声がして。



「ひぃっ!」


 
驚いて振り向けば。



「お前、なんちゅーブラジャー着けてんだ」


 
流川直人っ!


 
みみみみ、見たなっ!

 
っていうか、どっから現われたっ!?

 
まさか、マジエスパー?!



「ちょっ…なんで見んのよっ! えっち!」


「見えたの」


「それは、見た、と同じことでしょっ」


「お前のピンク好きはわかったけど、そういう趣味もあったとはな」


「だっ、これはっ! 私の趣味じゃなくてっ」


「あ? じゃあ今晩に供えて俺の趣味に合わせたってわけか」


 
出たー! ニヤリ顔!



「だっ、なっ、なに今晩って! しかもあんたの趣味って!」


「悪いがそれは俺の趣味ではないな」


 
あ、趣味じゃないんだ…。

 
って、納得するとこじゃねーよ、私!



「もう! バカ! えっち! スケベ!」


「あのな…見ようと思って見たんじゃねーって。裸見られたわけじゃないんだからそこまで騒ぐな、アホ」


「アホじゃないっす!」


「ぶ。なんだ、ないっすって」


 
うう…

 
興奮で口がまわらない。