振り下ろされた麻紀のこぶしは、祐二くんの後頭部にクリーンヒット。



「あでっ!!!」


 
頭を抱えて悶える祐二くんにさらに馬乗りになる麻紀。



「ふぎゅーーーっ!!」


「ま、麻紀、落ち着いてっ」


 
暴れる麻紀を祐二くんから引き剥がそうと後ろから腕をつかむと。



「キィーーーっ!!」


 
ボス猿みたいな奇声を発した麻紀に逆に振りほどかれ…

 
空中に舞う私と…カエル。



「ひえ~~~~」


 
たどり着いた先は、流川の腕のなか。



「あ」


「またか」


 
カエルと私を抱えた流川は呆れ顔で。



「お前の友達…とその彼氏、大丈夫か」


「さ、さあ…」


「あの彼氏、髪の毛むしられそうだぞ」


「ほ、ホントだ…」


「技、入ってるし」


「ははは…」


 
祐二くんの首に腕を回した麻紀は、白目むき出しのまま締め付けに入ってます…



「ぐ、ぐるじぃ…ま、麻紀…ごべ、ごべん…」


「あんたってヤツはいっつもそうなんだからっ!」


「お…じ…じぬ…」


 
呆気にとられた従業員が立ち尽くすなか、どうやら勝負は麻紀につきそうで。


 
「あ、あのお客様っ、お、落ち着いてくださいっ」


「すみません。彼女さんなんですね。私のせいですぅ…」


「と、とにかく落ち着いてください」


 
おろおろする従業員さんたちに。



「まったく。しょうがねーな」


 
私とカエルを包んでいた流川が何とか麻紀を引き剥がして。

 
私たちは「あは、あはは。すみませんっ。じゃ観光してきまぁす」

 
……逃げるように一旦旅館をあとにした。