「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました」


 
入口で出迎えてくれた従業員さんたち。

 
チェックインにはまだ時間が早すぎたけれど、荷物だけは預かってくれるってことで。



「お部屋に運んでおきますから、周辺の観光でも楽しんできてください」


 
荷物を預けると。



「その、カエルさんはどうしますか?」


 
まだ若い仲居さんが、遠慮がちというか、戸惑いがちに私の肩を指差した。



「あ、ああ、これはいいです」


 
焦って答えると。



「置いてかれると泣くんですよ」


 
麻紀が言った。しかも真剣な顔つきで。



「ええっ。そうなんですか!」


 
ちょっと麻紀…この仲居さん、本気にしちゃってるじゃん。

 
素直そうだからからかうのはやめなさいっ。



「今日もついていくって暴れて泣いて。大変だったんですよ」


「ええええ…」


「車酔いするし」


「そ、そうなんですか? お薬いりますか?」


「さっき飲ませたから大丈夫です」


 
あああ…なんだか知らないけど会話成り立ってるし。



「それより仲居さんすごく可愛いね。歳いくつ?」


 
祐二くんがちゃちゃを入れ始めた。

 

「えっと、18です」


「へえ~、若いねー。今晩部屋に遊びに来ない?」


「え? だ、ダメです、お仕事中ですし」


「いいじゃん、少しくらいならさ」


 
あ~あ、やばいよ。

 
ゆっくり麻紀を振り返ると。

 
噴火寸前の赤い顔。

 
ほっぺたなんて、ハムスターなみに膨らんでますけど。

 
あああ…半分白目だし。