「ま、あたしもカエルに再会できて嬉しいわ。唯衣、乗って。あ、流川直人も」
麻紀の言葉に。
「お前といい、お前の友達といい、なんで俺をフルネームで呼ぶ」
後ろでボソリとつぶやく流川。
「あはは」
「しかもあったばかりで呼び捨てだ」
「あはは…」
とりあえず私は笑いだけ返して、後部座席に流川とカエルと乗り込んだ。
似た者同士というのだろうか。
運転する麻紀の彼氏は…驚くほど饒舌な男の人で。
「どぉーもっ! 麻紀の彼氏でぇっす」
ホスト風のイントネーションをつけながら自己紹介。
「佐武裕二(さたけゆうじ)っていうの。裕二でいいから。こう見えて25歳」
麻紀が補足する。
25歳の落ち着きが見られない彼氏は。
テンションが異常に高く。
「いやぁ、うちの麻紀も可愛いけど、唯衣ちゃんがこんなに可愛い子だとは思わなかったよ。いいねぇ。流川くんもいいねぇ、こんな子と一緒に住んでるんでしょ? いいねぇ」
何が「いい」のかは分からないが、とにかく「いい」みたいだ。
「あたしもびっくりしたわよ。流川直人がこんなにカッコいいなんてさ。唯衣、あんたもう要くん止めて、流川直人にしたら?」
「………」
「………」
私と流川。
しばらく唖然として二人の怒濤のおしゃべりを聞いていた。
私はカエルのカラダを抱えて。
流川はカエルの伸ばした足に軽く手を添えている。
後ろを振り向いてスナック菓子を差し出した麻紀が派手にそれをこぼして、
私と流川の足元がスナックまみれになり…
「ぎゃ! ごめん! 裕二、ティッシュは? どこ?」
「俺の足元」
かがんで運転席に手を伸ばす麻紀に。
「うわっ! アクセルいじんなっ!」
叫ぶ裕二くん。
「疲れる旅行になりそうだな」
「あはは…そうだね」
私と流川は。
顔を見合わせて苦笑した。