「何時って。何時でもいいじゃん」
「よくねーよ」
「はっ! まさか腹へったから早く帰ってこいとか言うんじゃないでしょうね?」
「アホ。言わねーよ。遅いから聞いたまでだ」
「あのねぇ…子どもじゃないんだから、私」
「子どもみたいなもんだろ」
「なっ…」
「もう真っ暗だぞ、帰り道」
「え?」
「行ってやろうか?」
「は?」
「駅まで。迎えにいってやろうかって言ってんだよ」
迎えに?
「一応レンタル関係結んでるからな。これは俺の責任でもある」
あ…ああ、そういうことね。
私を心配して、とかそういうことじゃないわけね。
「別に…」
大丈夫だよ、と 言いかけて口ごもる。
まだ、あの夜の記憶は生々しく。
夜道をヒタヒタと追って来る足音を思い出したら、背筋が冷たくなった。
「あ、あの」
「ん?」
「お願いします…」
私の言葉に。
ふっ…と携帯から漏れてくる流川の鼻笑い。
「何時ごろこっちに着くよ?」
「えっと…」
私は流川に時間を告げて。
ホームで半分寝てるカエルを起こした。
手足がだらんと垂れて、完璧に脱力してる。
「乗るぞ、カエル」
私は気合いを入れて、滑り込んできた電車に乗り込んだ。
「は…恥ずかしくない、恥ずかしくない」
空席に腰を降ろす。
カエルを膝の上に乗せて。
だから! 見るな、そこの男子!