「じゃあ唯衣、流川直人にヨロシクね。旅行の件、ちゃんと話してよ」
じゃあねぇ~、と手をふって。
改札をくぐった麻紀はニコニコ笑いながら行ってしまった。
同じく改札を抜けた私。
両手でがっちりカエルを抱えて、取り残されてます。
「………」
あああ…恥ずかしい…
み、見るなっ! そこの男子!
「麻紀のやつ…」
こんな大掛かりなプレゼント…
かえって迷惑じゃー!
座ってないカエルは。
抱えて持つと、長い手足が、びろ~んと伸びて。
あはははは…
私とほぼ同身長。
「く…カエルめ…」
いや、このカエルに罪はないんだけど。
むしろ、捨てられた可哀相なカエルなんだけど。
「ハタチの試練、ハタチの試練」
なんか違うような気はするけれど、そうでも言わなきゃ恥ずかしくて。
私はカエルとホームへ続く階段を上った。
ホームに出ると。
ブルブル震え出した携帯電話。
「わ、お、あわわっ」
カエルが邪魔をして出るまでかなりの時間がかかってしまい。
「も、もしもしっ」
開いて速攻で出れば。
「俺だ」
流川の声。
こ、こんなときに何用じゃ!
片手が離れたカエルは、
私に右手を握られて、ホームでだらりと半分寝ている。
あああっ、汚れちゃうっ。
「な、なに?」
聞けば。
「何時になんの?」
………。
なに? その旦那の帰りを待ちわびる若奥さんみたいなセリフ。