「ねえ、麻紀…すっごく恥ずかしいんだけど」
いつものイタリア料理店で。
私と麻紀、いつものメニューを頼んで。
いつものテーブルで向かい合っていますけど。
珍客1名……いや、1匹…
「みんな見てるよぉ…こっち」
「いいじゃん、目立って」
「それがイヤなんだって」
私の向かい側に麻紀。
麻紀の隣りに、でっかいカエル。
「麻紀が包み紙バリバリに破いちゃうから…」
「あはは。つい」
隣りのテーブルの子供、すんごい真剣に見てるし、このカエル。
「今は麻紀がいるからまだいいけど…帰りの電車、一体どうすればいいわけ?」
このままじゃ私、このでっかいカエルをむき出しのまま抱えて電車に乗り込むことになっちゃうじゃん…
大注目じゃん…
「平気だって。アタシもこのデカさをファミレスまで運んできたんだから。あんたのチカラでも充分持てるって」
問題にしてるところ、違うんだけど…
持てる持てないの問題じゃないのっ。
恥ずかしさの問題なんだって!
しかもあんたが運んできたときは、紙に包まれてたでしょって!
「がんばって。ハタチの試練だと思ってさ」
「ううう…もう」
私はパスタをフォークに絡めながら麻紀をにらんだ。
勝手に試練にしないでよ。
カエルは麻紀の隣りにちゃんと座って。
でっかい口を赤々と開けながら。
膨れる私を笑って見てた。