「な、なんで流川なわけ?」
「だって他にいないじゃん。あたしと彼と、唯衣だけだったら、唯衣が可哀そうじゃない?」
確かに…そうだけど。
「かと言って、もうひとり女の子にしても、あたしの彼が可哀そうじゃん?」
「まあ、そうだね。じゃあ、全員女の子にすればいいじゃん」
「そう思ったのよ、あたしも。でもさ、彼氏が行くって言ってきかないんだ、これが」
「困った彼氏だね」
彼女の誕生日を忘れる、要くんも困った彼氏だけど。
「手っ取り早く、身近にいる流川直人でいいっしょ」
「手っ取り早くって。でも流川と麻紀、面識ないじゃん」
「そんなこと言ったら、あんたもそうじゃない。まだあたしの彼氏に会ってないじゃん」
「そうだけどさ。でも…」
流川と?
温泉?
なんか…似合わないなぁ。
「ね、決まり」
「でもぉ…ダブルデートみたいじゃん。要くんに怒られるよ」
「あのねー。彼女の誕生日を忘れてるんだから、そのくらい、お互い様よ」
「そういう問題じゃないし」
「ま、いいからいいから、ね? あたしもさ、流川直人、見てみたいんだよね。そのエスパー」
「…エスパーじゃないと思うけど? 流川にも聞いてみなきゃわかんないよ。アイツ、そういうとこ行かなそうだもん」
「じゃあ、聞いてみてよ」
「うん、聞くだけね」
無駄だとは思うけどね。
「ご飯食べてかない?」
「うん」
「今日はあたしがおごるから。あんたのお祝いに」
「やった」
軽く化粧を直して。
私と麻紀は、外に出た。