「今日って、冷やし中華のオーダー多かったと思わない?」
「うん、かなり」
バイト終了後。
再び更衣室。
「唯衣、来週空けといてよ」
「なに急に」
さっさと着替えてしまった麻紀は、カエルを抱えて遊んでいる。
そんなに気に入ってるなら…持って帰ってくれていいけど?
「当たったの、あたし」
「は? なにが」
抱えていたカエルを「よいしょ」と下ろした麻紀。
派手な黄色のバッグから取り出した封筒を私に差し出して。
「じゃーんっ! 温泉旅行、宿泊券!」
「え? 温泉旅行? 当たったの?」
「そうなのよ。あたしもいつ出したのか忘れたんだけどさ、何かの懸賞で当たっちゃって」
「へえ。すごいじゃん」
「しかもこれ、4人分あるんだ」
「へえ、ますますすごいじゃん」
「5ヶ所の宿の中から選べてね、そのうちの一ヶ所、すでに予約済みだから」
「へ? 予約しちゃってんの、もう」
「そう。だから唯衣もキャンセルなしね」
ま、また勝手に…
私が行けなかったらどうすんのよ。
ん? でも4人って言ったよね?
「麻紀と私と、あと二人、誰が行くの?」
聞いてみれば。
「あたしの彼氏と、流川直人でいいんじゃない?」
「はああ?」
そう来たかっ!
あんたの彼氏はわかるけど。
なんで流川の名前が出てくるの?