「な、なんで要くんがいないのに…っていうか泊まるってなに?」


「一ヶ月、ここに泊まるんだよ」


「い、意味が、わかんないんですけど」


「要に借りたんだよ」

「は?」


「レンタルしたっていうか、そんな感じ」


「レンタル…?」


 
意味が…わかりません。


 
まだ立ち尽くす私を尻目に。

 
そいつは勝手に冷蔵庫を開けて、缶ビールのプルトップをプシリと弾いた。

 
美味しそうにゴクゴクと咽を鳴らして飲んじゃってますけど。

 
 
こ、こらこらこら!!

 
無視すんな!!



「この部屋に泊まるって…私も…ほぼここに常駐してるんですけど…」


「ああ、聞いてる」



は?

 
聞いてる?

 
 
…っていうかあなた…

 
すごーく美味しそうにビール飲み干してますけど。

 
すっかりくつろいでる感がありありなんですけど。



「ま、そういうことだから」


「ちょっ、ちょっと! 意味わかんないから!」


「わかんないって言われてもなぁ。そういう話で契約は済んじゃってるし」


「け、契約って…それの意味わかんないって言うの!」


「ヨロシクお願いしますのキスでもしとく?」


「はあ?!」



ニヤリ。

 
笑ったそいつがゆっくり私に近づいてくる。

 
 
私は。

 
じりじりと後ずさりしたけれど、閉まった玄関の扉に行く手を阻まれ。


 
バスタオル一丁のそいつが目の前までにじり寄ってきて。

 
にゅっと、硬そうな腕が私に向かって差し伸べられたとき。



「ぎゃーーーっ!!」


 
私は。


ぱったりと。



気を失った……