「言いたいことは、そのようなものだ」

「兄さんらしい」

「弟を心配して悪いか」

「そんなことはないよ」

 エイルがどのような発言を繰り返そうが、心の底から心配している兄イルーズ。

 その優しさに素直に感謝の言葉を返すと、今日は兄の意見に従い朝食を取りに行くと告げるのだった。

 弟の唐突的な心境の変化に目を丸くするイルーズであったが、この心境の変化は喜ばしい。

 イズールにとって成長期の弟が、きちんと食事を取ってくれればそれでいい。

 それは自身の身体が弱いということも関係しており、エイルにはこのようになってほしくはなかった。

 口煩い兄――そのように思うのだが、痛いほど兄の心情が伝わってくる。 

 それに、食事を取らないエイルが悪いのだ。

 入学試験の勉強を行っている時は、更に食事の回数が減った。

 脳を効率よく動かすには栄養価の高い食事が必要不可欠だが、時間が勿体無いと拒絶する。

 今思えば無謀な行為で、下手したら栄養不足で倒れていただろう。

 北国は食料危機に見舞われやすいと思われがちだが、この地は思った以上に豊か。

 餓死ということは、有り得ない。

 エイルのように自主的に食事を抜かなければ、普通に栄養価の高い食事を取ることは可能。

 だというのに、栄養不足で――

 こうなると、洒落という言葉では済まされない。

 何より、このようなことでエイルを死なせたくなかった。

 素直に願いを聞き入れてくれたことに、イルーズはポンっとエイルの頭を叩く。

 すると叩くには丁度いい高さに頭があったのか、イルーズ何度もポンポンっと叩いていく。

「に、兄さん」

「何だ」

「子供扱いしないでほしいな」

「いや、子供だ。このように、周囲に心配を掛けている。本当に大人だと思うのなら、心配を掛けるな」

「わかっている」

「それなら、言うことを聞け」

 的を射た言葉に、エイルはムスっとした表情を浮かべていた。

 子供と大人の差――言葉で説明したところで、その意味を理解できる年齢ではない。

 エイルは魔法を学びたいということで、メルダースの入学試験に挑戦した。

 いや、それ以上に大きなことが存在している。