だから、過度に心配する。

 勿論、口煩いとは理解している。

「エイル、朝食は?」

「食欲がない」

「そう言って、一日一食というのは考え物だぞ」

「一応、二食だよ」

 それはエイルと呼ばれる少年が持つ概念であって、一般常識が当て嵌まることはない。

 そして二食というのは、昼と夜の食事。

 しかし昼食は、食べていないに等しい食事量であった。

 普段は、生野菜のサラダかパン一個。

 そして更に食欲がない時は、飲み物で済ませてしまう。

 エイルの年齢からいえば、今は成長期。

 この時期にきちんと食事を取らなければ、成長しないだろう。

 それを証明するかのように、同年代に比べて身長が低い。

 無論、体重もない。

 勉強によって知識を吸収することも大切であるが何より身体が資本なので、このような食生活に兄は溜息を付く。

 しかし、兄の気持ちを理解していないエイルの反応は素っ気ない。

 現に不摂生な生活を送っていようが、普通に生きているからだ。

 だが見る人が見れば、栄養不足というのはわかってしまう。

「心配だ」

「大丈夫だよ」

「いや、今はいい。お前がメルダースに入学した後が、心配なんだ。全て、一人で行わないといけない」

「今も、一人だよ」

「そういう意味じゃない」

 要は、生活面のことを心配していたのだ。実家で生活していれば、食事の管理は周囲がしてくれる。

 一人になってしまえば、周囲に監視役がいない。

 必然的に食事は後回しになってしまい、今以上に食べなくなってしまうだろう。

 そのことを心配して言った言葉であったのだが、エイルが理解しているかどうかは怪しい。

 寧ろ、左から右へと抜けている可能性が高かった。

 兄弟とは思えない余所余所しい態度が、見え隠れしている。

 周囲には薄暗い雰囲気が漂い、その中で会話を進めていく。

 淡々と、一定のリズムを刻む声音。

 それが二人の顔から、笑顔を奪う。

「なら、何を――」

「身体を心配している」

「それ、同じだよ」