その時の先生は、真剣でとても優しい瞳をしていた。
しかし、先生の言葉から、不安を余計に募らせてしまった。
―――焦らずゆっくり……??
それって…どういう意味なの…??
頭に疑問が浮かんだまま、急いで帰りの用意をして、階段をかけ下りていた。
とてつもない胸騒ぎが、私の足を勝手に動かしていた。
と、その時。
「あっっっ!!」
ガタガタガタッッ
「っ…危な…」
私は勢いよく走っていたこともあり、足を踏み外して、階段から転げ落ちそうになった。
しかし、手すりにしっかり捕まり、転げ落ちることを阻止できた。
「ハァハァッ………」
たくさんの気持ちが入り交じり、心臓の鼓動が尋常じゃなかった。
その時やっと私は、我に返った。
――あんなに不安定な状態で走ったら、転びそうになるのも当たり前だ。
――焦らずゆっくり歩こう。
そう思うことができた。