美桜が悠汰によって助けられた頃、九条院家では騒動が起きていた。
それは賊が侵入したというもの。
だが賊が何者であるのか、そして護衛人が厳重に警護している九条院家にどうやって侵入したのか誰も知らない。
柊家の護衛人が総動員して早1時間ほど経つが、未だ侵入者は捕まっていない。
護衛人達もこの侵入者情報は誤報ではないかと思い始めた頃。
九条院家現当主・重文は九条院家最上階にある広間で一人ガラス張りの壁から外を見下ろしていた。
その目つきは人間を見下しているようであり、どこか憂いを帯びている。
彼の思っていることなど、誰にも分からない。
そんな彼のいる広間に向かってコツコツと足音が聞こえた。
重文は目線を扉の方に向けたが、再び外を見下ろした。
コンコン
「…凱斗か。侵入者は見つかったのか」
扉がノックされたのを合図に、重文は扉の向こうにいるであろう護衛人・凱斗に声をかけた。
すぐに返事はなく、代わりに扉がゆっくりと開いた。