鈴波side


「ここが、羽生高校か…」

高校一年の秋。
空気が乾燥してきて
だんだん、
寒くなってきたころ。
私は、転校することになった
お父さんとお母さんが
離婚したから。
お父さんとお母さんには
どちらにつくか
決めろと言われたけど
私は親を選ぶなんてできなくて…
お金だけ送ってもらって
独り暮らしをすることにした。

「やっていけるのかな…」

この間までは、大好きな家族がいて
友達もいた。
今は独りぼっち。
そう考えると不安になる。

「おい、間宮鈴波」

門の所でおどおどしていた私に
担任になる田中誠一先生が
声をかけてきた。

「は、はい!」

「緊張してるのか?間宮」

「少しだけ…」

ふっ、と笑い私の頭をぽんぽんすると
大丈夫だ、行くぞと言って
教室へ行くことになった。

「合図したらこいよ?」

「はい」

そう言い残すと
私は廊下でまたされ
先生は勢いよく教室に入った。

「きたー!ゴリ!!」

「ゴリ先だー!」

「お前らーゴリゴリうるせーぞー」

そんな、ノリのいい
先生の返事にクラスのみんなは
楽しそうに笑っている。

「今日は転校生がくる!」

急な報告にクラス中がどよめきだした。

「え!?」

「まじで!?」

「男の子かな?」

誰かが言った男の子かな?に
少しだけ罪悪感。
ごめんなさい女です…汗

「男子よ…喜べ。女だ」

「「うおおおお!」」

低くて太い男の子たちの
叫び声が聞こえて、
びくっ!としてしまった。

「え、でも不細工だったらどうするよ?」

一人の男の子が我にかえり
きつい言葉を言った。
一瞬にしてクラスが静まり
私は教室に入りずらくなってしまった。
入りずらくなったのに

「入っていいぞー」

先生からの合図がきてしまった。
一度深呼吸をして
ガララとドアを開けた。

「間宮鈴波です。
よろしくお願いします」

一礼して顔をあげた。
シン…と、なってしまった教室。
恐る恐る顔を上げた。

「かわいいじゃん!」

急に大声で言われて
びっくりしてしまった。

「誰だよー不細工だったらとかいったやつー」

「「お前だろ!」」

最初は馴染めるかどうか
心配だった。
でも
みんな明るくて仲がよさそうで…
私はそれだけで安心した。

「間宮さんは、彼氏いるんですかー?」

黒髪の少しひょろっとした体型の
男の子に質問された。

「い、いませんよ!」

そんな質問されるなんて
思ってなかったから
両手でいないいないと
ジェスチャーした。

「まじで!?」

びっくりしてる様子のみんな

「まじです!」

私がそう答えると何人か
ガッツポーズをしていた。
そこから先生が割り込んできた。

「はい。しゅーりょー、間宮は隼の隣な」

「はやと??」

クラスの人の名前を呼ばれても
私にはまだわからない汗
無意識に聞き返すと
先生は気づいたらしく

「スマンスマン!一番窓際で一番後ろのあいつだ」

「ありがとうございます」

私はみんなに見られながら
席の間を通って、
指定された席に座った。

「間宮!」

「え!?」

名前をよばれてびっくりした私に
隣の彼は手をさしのべて

「俺は、隼羽修沙!陸上部だ!よろしくな!」

「陸上部?ほんとに!?」

「おう!」

私は隼くんのさしのべられた手を握った。

「私も陸上部なんだ!よろしくね!隼くん!」

初めてあったのに
とても優しい笑顔で
話しかけてくれた君。
もしかしたら
この時、すでに
私は君に恋をしていたのかもしれないね。