「何見てんの」



今度は直接あたしを見て、浩ちゃんがふっと笑う。



「みてないよ…」



余裕そうなその顔がなんだか嫌で、クッションに顔を押し付ける。


急にテレビの音が消えて、はっと顔をあげると
目の前に浩ちゃんの顔があって、覗き込まれている。

テレビは、どうやら浩ちゃんが消してしまったらしい。



「テレビ消しちゃったの…?」


「杏見てないし。」


「…ね、浩ちゃん近い……」


「うん。」


「"うん"じゃなくて…」


「何か言いたいことあるんでしょ?」


「え……」


「なんか杏からの視線感じてたんだけど。見てた?」


「えっ、と……」


「言ってみ?」



至近距離でそういう浩ちゃんは、やっぱり少しだけ笑ってる。


きっと、あたしの考えてることなんてバレてるんだろう。

なのに言わせようとする浩ちゃんは意地悪だ。



ちょっと悔しいけど、

たまには素直になってみようかな…なんて。