特に意味もなく携帯を取り出してみる。


嫌がる浩ちゃんを説得して撮った、待ち受けの2ショットを見つめる。



浩ちゃんの声聞きたいな…


やっぱり今電話してもいいかな…



電話帳に画面を変えようとしたら、勝手に着信画面に切り替わって。


映し出される【浩ちゃん】の文字に、急いでマークをタップした。



「もしもし!?」


『杏?』


「うん!」



"なんか嬉しそうだな"って、笑い混じりの浩ちゃんの声が響く。


大好きなその声は、電話越しだといつもより低く聞こえた。



あーだめだ、あたしにやけてる気がする。


あたしの顔見て皆もにやけてるから、電話の相手はバレているんだろう。



「どうしたの?お仕事中じゃないの?」


『あー…そうなんだけど…』


「…ん?」



言いづらそうな浩ちゃんに嫌な予感がするけど、聞かなきゃいけないから先を促した。



『ごめん、夜仕事が入りそうでさ…。』


「そっか…遅くなっちゃう?」


『うん、多分…今日はやめとく?』


「それはやだ!」


『じゃあ…先俺ん家いていいから。合い鍵持ってるよな?』


「うん、持ってる!」


『じゃあ家で待ってて。鍵はちゃんと閉めろよ?』


「はーい!」



"じゃあ夜な"って浩ちゃんの声を聞いて、電話を切る。



「"浩ちゃん"?」


「うん、夜会う約束してるから」


「いいねぇ~…いちゃいちゃラブラブ、"浩ちゃん"に愛されてくる訳だ?」



"あんたが言うとやらしい~"なんて笑いながら、

"明日また聞くからね!"って肩を叩かれながら、

ファストフード店を後にした。