「…それで?そのあと、ふたりはどうなったの?」
純真な眼差しで此方を向く少女は、この優しくも儚い御伽話を聞いて尚、続きを知りたがる。
御伽話というものはいつの時代も、気になることを語らないままに終わりを迎えると相場が決まっている。
……いや、そうでもないか。
「…何年か後、彼等の入った小屋は取り壊され、その跡地には華麗な華が咲き乱れる美しい高原になった、っていうお話よ」
独り言のように呟くと、膝元に置いた本を閉じ、少女を抱き上げる。
「おかあさま、またあしたもおはなししてね!」
ベッドに寝かされた少女は此方の首筋に擦り付き、頬に口付けをする。
「おやすみなさい」
そう言って布団を掛けてやるとすぐ、気持ちよさそうな寝息が聞こえた。
物語は、いつの時代も人々の心を魅了し惹き付ける。
…踊り子の少女に魅せられた少年も、もしかしたら同じ気持ちだったのかもしれないと、明かりの消えた子ども部屋を見て、ふと思った。
-The End-