その日も少女は少年のために華を咲かせた。
しかし、少年の視線にいつものような熱っぽさはなく、何処か寂しい、暗い目をしている。
その理由が気になった少女はそっと少年の隣に座った。
そう、それは禁忌。
絶対に交わることの許されないふたつの世界は周りの意思を欺いて惹かれあおうとしている。
少年は、ただ純粋に少女が隣にいることがうれしくて
ちょっと、肩にもたれてみた。
その擽ったさに身を縮こませた少女は、少年の肩にそっと触れる。
重なった体温は柔らかく、やがてふたつの世界はどちらともなく戯れを交わす。
少女のそれは少年を深く魅了し、少年もまた少女を捕らえた。
互いに互いが魅了し捕らわれている状況に、ふたつの世界は逃亡することを決める。
少年は少女の手を強く引くとフロアを抜け外に飛び出す。
外の世界など微塵も知らない彼等は行く宛もなく、ただただ走った。
どれほど走ったのだろう、気付けば辺りは閑散とし、少女の衣装もボロボロになっている。
ひっそりとした小屋を見付けた少年は少女を手招きし中に入る。
小屋の中は酷く暗くなにも食べずに走って来た彼等は互いの腹が鳴るのを聞いた。