ひゅうと冷たい風が吹き抜ける。

屋上……。

今思えば、色々あったっけ……。

耕輔と結ばれたのってここだったよね…?

すべての発端はここ。

愛着があるここだけれど…………。

さようなら…。

よいしょと手すりを超え、あとは落ちるだけ。

あたし、おかしくなっちゃったのかな?

全然怖くないや。

「バイバイ…。みんな……」

手すりからそっと手を離した。

フッと体が落ちてゆく。

ガシッ。

「さやか!?待て!」

「や!やめて!!」

「死ぬなよ…。いくらなんでも死ぬことないだろ……」

「何言ってるの?死ぬんじゃないよ…。耕輔に会いに行くんだよ?」

「死ぬな!!お願いだから…死なないで…?耕輔は絶対お前に死んで欲しくないと思う。好きな…愛してる女に死なれたら、絶対ヤだよ!」

「でも…私……」

急な恐怖。

恐ろしい、あの高さ……。

ガタガタガタガタ。

「ゴメン!怖いよな!!気づいてやれなくてゴメン……」

「いいんです。きにしないでください」

ギュウ…。

後ろからすっぽりと抱きかかえられた。

「ねぇ。さやか。聞いてくれる?」

「はい……」

「俺、さやかが好きだよ…。あのときは正直あんな理由で別れてすごいショックだったよ…」

「は……い………」

「さやかの気持ちはさ。もう、俺にはないの…?ひとかけらもスキって感情はないの??」