「何もされてないわけないだろ!まみ、今、先輩に髪引っ張られてたじゃん。……、痛かっただろ……」


瀬戸はそう言いながら、掴まれていた方の頭を優しくなでる。


「後で雨宮先輩に言おうな?」

「ダメッ!雨宮先輩には言わないで!」


私は瀬戸のシャツの胸元を掴みながら、必死に訴える。


「何で?今の雨宮先輩のファンだろ?雨宮先輩から言ってもらった方が……」

「お願い。雨宮先輩には言わないで……」


雨宮先輩には知られたくない。

先輩達に『近付くな』と言われたからって、言う事きくつもりもない。

ずっと好きだった人。

私は、雨宮先輩のそばに居たいし、離れたくない。

この事を言った事がバレたら、何をされるかわからない。

それも正直怖い。

言った方がいいのか、言わない方がいいのか……

何が正解かはわからない。

だけど、この事を言う事によって、雨宮先輩に迷惑をかけてしまう。

それは嫌だ。