(あぁ、もうっ!!



本当に世話のかかるお姫さまだ!!)






藤波は眉根を寄せた険しい表情で、市の人混みを掻き分けていく。





四半刻ほども駆け回ったあと。






「…………あっ」






遠くのほうにある、見覚えのある衣被の姿が、目に飛び込んできた。






藤波は慌てて方向転換し、そちらへ走り出す。




人が多くて、なかなか思うようには進めない。





その間に、汀はある店に入って行った。





「………ん? 買い物か?」





汀はすぐにその店から出てきた。




その腕には包みが抱かれている。




まだ遠かったが、藤波は声をかけようと口を開いた。





しかしその前に、汀は向かい側の店に再び入っていった。





今度は、なかなか出て来ない。





藤波はやっと、その店のすぐ近くに辿り着いた。





戸口から中に入ろうとすると、頭巾を被った小柄な男が出てきて、肩をぶつけてしまった。






「あ、すみません」





藤波が謝ると、男は「いえ、大丈夫よ」と小さく言った。