灯のつれない言葉に、汀は目を丸くした。





「んまぁ!


あなたったら、毎朝いったいいつまで寝ているつもりなのかと思っていたら………狸寝入りだったのね!」





「……………」






怒りに任せて墓穴を掘ってしまった灯は、ちっと舌打ちをする。




汀は腕の中の青丹丸をぎゅっと抱きしめた。





「………ねぇ、聞いた? 青丹丸。


蘇芳丸ったら、犬のくせに狸寝入りをしていたのですって!


どう思う? ひどいわよねぇ。



あー、もう、私の味方はやっぱりあなただけだわ!」






芝居がかった口調で青丹丸に頬ずりをする汀に、灯が低く告げる。






「………俺は犬ころじゃない。


狐だと言ったろうが」






その訂正はさらりと無視して、汀はつんと顎を上げた。





「さ、行きましょ、青丹丸」





そう言ってがさごそと寝ぐらをあとにする汀の後ろ姿を、灯は無言で見送る。





そのあと、どっと疲れたように枯葉の中に突っ伏した。