静かな琥珀色の瞳に下から見つめられて、汀は目を丸くした。






「えっ！？


だって、追いかけなきゃ………栗野が逃げたら困るわ！」






焦った様子で灯の手を引き剥がそうとする汀の腕を、灯はさらに強くつかむ。




そして、低く呟いた。






「………お前と違って、栗野はしっかりしつけられているから、勝手に遠くに行ったりしないんだよ」






ずいぶん失礼な言い草だが、汀は焦っているので気にせず、さらに言い募る。






「だめよ、もしかしたら気づかないうちに変なところに迷い込んじゃうかもしれないじゃない！！」






汀がやはり栗野を追いかけようとしているので、灯はふぅと溜め息を吐き出した。





そして、地に背をつけたまま、思い切り汀の腕を引く。





思わぬ強い力に、体勢を崩した汀は、ばたりと灯の上に倒れこんだ。






その隙を逃さず、灯はがっちりと汀の頭を抱えこむ。






「…………んまぁ」






灯の胸に頬をつけたまま、汀はその腕にきつく捕らわれ、動けなくなった。