母屋に忍び込むと、汀は母の部屋へと向かった。





建物の中は、相変わらず薄暗く、ひっそりと静まり帰っている。






「………もうすっかり宵だし、お母さま、お休みになっているかしら」





「………どうかな」






母の寝屋の前に着き、汀はそろりと御簾を押しやった。




やはり、起きている者の気配はない。






汀は包みだけを置いて、立ち去ろうとした。





その時、物音に気づいたのか、褥の中で身じろぎをする気配がした。







「………誰か、いるの?」






少女のように可憐な声が聞こえてきた。







汀は一瞬動きを止めてから、小さく「お邪魔してます」と答える。