「ーーーやっぱり!


もう桜が咲いてるわ!」






家に着いた途端、母屋の向こうに煙って見える薄紅色を見て、汀が歓声を上げた。






「青羽山の花が満開だったから、きっとここの桜も蕾が開いたんじゃないかと思ったのよ」






汀はくすくすと笑いながら、庭へと足を向ける。






「あ、その前に、お母さまにこれを差し上げなきゃ」






そう言って、汀が懐から包みを取り出す。






「何が入っているんだ?」






灯が訊ねると、汀は包みを開いて中身を見せた。






「…………金じゃないか」





「そうよ。


青瑞の姫として占いをしていたときに稼いだ分よ」





「それ、青羽山の盗賊に献上するはずだったんじゃないのか?」





「ふふ、黙って持ってきちゃった」





「大丈夫なのか」





「大丈夫よぅ。


だって息吹ったらすっかり毒気が抜かれて、きっとお金のことなんて忘れちゃってるわ」






「…………ちゃっかりしてるな」







灯は呆れたように笑った。