「さて、じゃあ、皆そろったことだし。


都へ戻って、白縫山に帰ろうか」






群雲が言うと、汀が「あの〜」と手を挙げた。






「ん? どうした、汀」





「あのね。


ちょっと行きたい所があるから………都に着いたら別行動していいかしら?」






群雲が目を丸くした横で、灯が顔をしかめる。






「…………お前、またそんなことを。


さっき、これ以上勝手なことをするなと言ったばかりだろう?」







すると汀は背伸びをして、灯の耳に囁きかけた。







「お願い、これだけは見逃して。


お母さまの所に行きたいのよ」






「……………」







灯はふぅ、と溜め息を洩らして、群雲を見た。







「…………仕方ない。


俺がついて行くから、別行動をさせてやってくれ」







群雲はくすりと笑って頷いた。







(…………結局のところ灯は、汀には勝てないんだなぁ………)