しばらくの間ぐずぐず言っていて、やっと嗚咽が治まった汀が、ぱっと身を起こした。





その姿を何気なく見て、灯は思わず目を剥いた。






「…………おっ、前!!


なんて格好をしてるんだ!!」






「え?」







突然に怒鳴られて、汀がきょとんと首を傾げる。





その姿は、かなりあられもないものだった。





白の薄い麻の着物一枚で水に飛び込んだため、濡れそぼった布の下の肌の色が、完全に透けているのだ。






その胸元のあたりも肌色があらわになっているのを横目で見て、灯は慌てて汀の頭を掴んで伏せさせた。





もちろん、側で立ってこちらを見ている息吹の視線を意識しているのだ。





灯は自分の着ていた濃い藍染の直垂をばさりと脱ぐと、汀の肩にかけた。







「とにかく、それを着ろ!!」





「あら、ありがとう」





「………この破廉恥め!!


少しは恥を知れ、といつも言っているだろう!?」







怒りと呆れを隠すこともなく言う灯を見て、なぜか汀は嬉しそうにうふふと笑った。