鼓膜を優しく揺らす、低い声。





なぜだか、ものすごく久しぶりに聴いたような気がした。








汀はしゃくりあげながら、灯をじっと見つめる。








「……………ばか!!


本当に、死んじゃうかと思ったじゃないの…………」








恨めしそうな言葉に、灯は少し目を瞠ってから、くすりと笑みを洩らした。







「…………能天気なお前でも、さすがに焦ることはあるんだな………」








いかにも意外そうな声音に、汀は少しむっとする。








「…………んま、失礼な。



ほんとに、ほんとに、どうしようかと思って………ほんとに心配したのよ。




…………怖かったわ。




あぁ、こんなに焦ったことって、今までなかった…………」








先ほどまでの悲痛な想いを思い出して、汀は顔を覆った。







「…………すまなかった」







灯は小さく呟き、汀の頭を優しく撫ぜた。