汀は灯を抱えたまま、足で水を掻いてなんとか浮上した。





水面からざばりと顔を出し、大きく息を吸い込む。






「…………はぁっ、はぁっ!


く、苦しかったぁ、死ぬかと思ったわ!」







少しの間ぜぇはぁと呼吸を整えてから、汀は息吹に目を向けて手招きをした。






「…………息吹、早く早く!!


蘇芳丸を引き上げてちょうだい!!」






「おっ、おう!!」






息吹は水際から手を差し伸べ、蒼白い顔で汀にもたれかかっている灯の腕を掴んで引っ張った。





それを見届けてから汀も自力で縁に手をかけ、泉から脱出した。





息吹は泉から離れたところまで灯を引きずって行き、草の上に寝かせる。






しかし灯は全く動かなかった。





髪の先から水を滴らせながら、汀はずりずりと灯の傍らへ座り込む。






生気を失った顔に、頬を近づけるが。







「…………う、そ。



息、してない………」






汀は信じられないといったように小さく呟いた。