青瑞の姫が長髪を蠢かし、汀と灯を引き剥がそうとする。




汀は、なるものかと唇をぐっと引き締めて、さらにぎゅうっと灯の身体にしがみついた。






「いたた………」






汀の腕と青瑞の姫の髪によって双方向に引っ張られ、さすがの灯も呻くように顔を歪めた。




逃れられるなら逃れたいが、全身を湿った髪でぐるぐる巻きにされた状態では、身動きひとつままならない。






しばらく無言で汀とぎりぎりいがみ合っていた青瑞の姫は、ちっと舌打ちをもらした。







『…………話の分からん女だな。


その美しい男は、私の愛人だと言っておるのに』






「あら、何を根拠にそんなことを?」







汀が顎を上げて問うと、仕方ないとばかりに首を軽く振って、青瑞の姫が語り出した。