「…………な、なぜ殴る!?」







灯は混乱したように汀を見下ろす。




汀は唇を尖らせて、ふんっと顔を背けた。




そして青瑞の姫へと視線を移す。






「……………青瑞の姫さま」





『ん? なんだ?』







青瑞の姫は上機嫌な様子でにっこりと笑い、灯の頬をするすると撫でながら汀を見つめ返した。







「おひとつ、よろしいですか!」




『どうした?』







汀はきゅっと唇を引き結んでから、意を決したように顎を上げて口を開いた。







「ーーーーーあのですねぇ。



蘇芳丸は、私の犬なんです!


勝手に抱きついたりしないでもらえますか!?」






『………………は?』








青瑞の姫の顔から、喜色が一気になくなった。