汀は不意に意識を取り戻し、ぱちりと瞼を開いた。




朦朧としたままぱちぱちと瞬きを繰り返し、樹々の梢の向こうに広がる空をぼんやり見上げる。




芽吹いたばかりの葉たちは明るい陽射しを受けて、鮮やかな黄緑に輝いていた。






(………まぁ。


なんてよく晴れた、きれいな青空。



いいお天気だわ。


蘇芳丸とお散歩でもしたいわねぇ………)






のほほんと笑みを浮かべてそこまで考えてから、はたと我に返る。







(…………あらっ。



なにか大変なことを忘れてる気が………)






汀はおもむろに起き上がり、周囲を見渡して、現状を思い出した。







(いけない、呑気に寝てる場合じゃなかったわっ!!)






汀は慌てて立ち上がり、「蘇芳丸っ!!」と叫んだ。