汀は誤魔化すように笑いながら、灯が逃げられないようにぎゅっと腕をつかんだ。






「ねぇ、蘇芳丸!!


青瑞の姫の泉に寄ってから、帰りましょうよ!!」





「……………はぁ?」






またもや突拍子もないことを言い出した汀に、灯ははぁっと盛大な溜め息を洩らす。






「………お前なぁ。


そんな余裕が、どこから出てくるんだよ。



俺たちは今、白縫山を目の敵にしてる青羽山の盗賊たちに囚われてるんだぞ?


今を逃したら、いつ逃げ出す機会があるかーーー」






「そんなこと、分かってるわ!!


でも、ちょっとだけ………。



私、勝手に青瑞の姫の名を騙って占いなんてやっていたから、このままだと後味が悪いのよ………」







汀が必死の形相で、いつになく殊勝な態度をとってくるので、灯は調子が狂って言葉に詰まった。