「あの………。



藤波さんは、息吹たちがあなた方に乱暴を働かないという条件で、ああして雑用を引き受けてくださっているんです」






白鷺が囁くような声で教えてくれた。




汀は小さく拍手をして、「なんて良い子なの、藤波ちゃん」と笑った。






しばらく様子を見ていたが、息吹は藤波をからかうのが気に入っているようで、離れる気配がない。




そうこうしているうちに他の盗賊たちがやってくると面倒だ、と灯は焦りを覚えた。






(ーーーーーあの男ひとりなら、なんとかなるか………)






そう考えて、灯は意を決した。





「……………おい、汀」





低く呼びかけられて、汀が「ん?」と顔を上げる。




灯は目を細めて、その屈託のない表情を見下ろした。






「…………お前、この間の内裏ーーー宴の松原での事を、忘れていないだろうな」





「え? なんのこと?」