黒松が去ったあと、群雲は大きく溜め息を吐き出した。




ゆっくりと立ち上がり、唐櫃の中に隠してある酒の瓶を取り出す。





二人分を注いで、灯の前にも置き、一息で飲み干した。




それを見つめながら灯が小さく言う。





「………檀弓にばれたら、また叱られるぞ」




「………いいさ。これが飲まずにいられるか」




「………分かるよ、その気持ちは」






灯はかすかな苦笑いを目許に浮かべ、自分も酒器をとった。






「…………予想以上に、面倒なことになっているようだな………」






独りごとのような群雲の呟きに、灯も吐息を洩らしながら頷く。





「まぁ、あいつの起こす行動が、こちらの予想通りだったことなど、一度もないが………それにしても、今回は、訳が分からん」





「…………ふむ。それもそうだ。さて、どう手を打てばいいかな………」






二人の溜め息がそろった。