群雲はしばらく頭に手を当てていたが、隣で仏頂面をしている灯をちらりと見て、小さく言った。






「…………汀だろうか?」





「…………汀だろうな」






灯は低くうめくように答えた。




そんな二人を見て、黒松は目を軽く伏せ、申し訳なさそうな表情で口を開く。






「…………とにかく、青瑞の姫の占いは大人気で。


せめて顔だけでも見せて欲しいと願い出たのですが。


占い処を経営しているらしい男に、すげなく断られました。



ですので、噂の青瑞の姫が誰なのか………確かめることはできませんでした。


力及ばず、申し訳もございません」






「………いや、お前の力不足ではないよ。


その男が何者なのかは分からないが、青瑞の姫の顔を見られては有難みがなくなると考えて、客には見せないようにしているのだろうな」






「………おおかた、そんなところだろう」






群雲の言葉に、灯も頷いた。