「こちらは、もっと訳の分からない噂なのですが………」





「ほう?」





「お頭、灯。

『青瑞の姫』という伝説を、聞いたことがありますか?」





「…………は? あおみずのひめ?」






群雲が眉を上げて、知らないという仕草をしてみせると、灯も同意するように頷いた。






「そうですか………。


私も初めて耳にしたのですが、どうやら、東のほうでは割合に有名な話のようなんです」





「ふむ。一体どういうものなんだ?」





「はい………青羽山に伝わる伝説です。


山にある泉の守り神といわれている、水の精霊ーーーそれが、『青瑞の姫』です」





「泉の守り神、水の精霊………青瑞の姫」






群雲が確かめるように繰り返した。




灯は黙って黒松を見つめる。